Jobpicksが終了して元記事の公開も終了したため、内容を転載いたします。(一部の画像は含まれません)
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副業で失敗しない「始め方と続けるコツ」コミュニティ
主催者に聞く
2022年2月18日
会社が社員を育てる時代から、個人でキャリアを切り開く時代となり、「副業(以下、文脈に応じて「複業」表記)」はずっと身近なものとなった。新入社員でも、副業を始める人が増えている。
しかし、フルタイムで働く会社員にとって、興味はあっても「どう始めればいいのか」「本業と両立し続けられるのか」と、ハードルの高さを感じることも多いのではないだろうか。
パラレルキャリア研究所の代表を務める慶野英里名(けいの えりな)さんは、出版社に勤務しながら、これまでパラレルキャリアに関するイベントを80回以上開催。
自身も複業でキャリアを切り開きながら、たくさんの副業経験者と対話してきたという。
そんな慶野さんによる実践的な副業の始め方解説から、タイムスケジュールのコツ、副業疲れの防止法までを、「複業ライター」の岡田が聞いた。
目次
副業はキャリアのリスク回避に最初は「ドメイン」か「スキル」重視
時間をやりくりする3つのコツ
「副業疲れ」を防ぐ続け方
副業はキャリアのリスク回避に
岡田:今回は、私もいち複業実践者として、パラレルキャリアの研究をしている慶野さんにいろいろ学ばせてもらえたらと思っています。
最初に聞きたいのは、なぜ会社勤めをしながら複業を始めたのか?です。
慶野:私は小さい頃から文章にかかわる仕事をしたいと決めて、戦略的にキャリアを描いていたつもりでした。
しかし20代前半で2度、自分が思い描いていた未来がひっくり返る経験をしたんです。
1回目は、大学卒業の間際。学生ライターとして編集プロダクションに所属していましたが、突然、社長が病気で余命宣告を受け、会社をたたむことになりました。そこに就職するつもりで、就職活動もしていなかったんです。
2回目は、新卒1年目の時。1年の就職浪人を経て、ようやく希望する医療系の出版社に入社しました。
しかし配属先は、なんとコールセンターの庶務。入社するまで、その部署があることすら知らされていなかったのにです。
新卒時代に直面した、配属ガチャによる「キャリアの危機」を語る慶野さん
それで、未経験ながら知り合いが出す書籍の編集担当を買って出てスキルを磨きつつ、社内ではいろんな方に相談しながら異動を願い出まして。入社2年目に、なんとか編集部門に異動できました。
岡田:強烈な原体験ですね。
慶野:会社は潰れることがあるし、配属は個人の人生の満足度が優先されにくいことを痛感しました。
編集部門に異動してからも、人生をかけられる旗を探してあれこれ活動していたのですが、一番しっくりきたのが「パラレルキャリア」だったんです。
「会社の中で閉塞感を感じていて、なんとなく今の状態を変えたい」「けれどロールモデルがいなくて、方法が分からない」。
自分自身がそう感じて始めたパラレルキャリアについて、同じような悩みを持つ方にも情報提供することで、人生をポジティブに変えていくお手伝いがしたいなと思いました。
最初は「ドメイン」か「スキル」重視
岡田:慶野さんはすごくしっかりしたWillがありますね。
複業していると、複業に興味を持っている人から「明確なWillがなくて、何から始めたらいいのか分からない」という質問をよく受けます。他の方はどのようにして複業を始めるのでしょうか?
慶野:岡田さんは、どうやってライターの複業を始めたんですか?
岡田:文章を書くのが好きだったので、大学の頃からずっとブログを書き続けていました。SNSで発信するうちに、知り合いの目にとまって、執筆を依頼されるようになったんです。
慶野:すごく良い事例じゃないですか!最初はプロボノなど、無償の仕事から始めるのが一番多いケースだと思うので。私も、はじめにプロボノでNPOの情報発信をお手伝いしたことが、有償での複業につながりました。
加えて大切なのは、岡田さんのように自分が得意なこと・好きなことをSNSで発信し続けること。バッターボックスに立ち続け、その姿を人に伝えるのはとても大事です。
どう複業を始めるか悩んでいる方は、今自分が持っている「ドメイン(ビジネス領域)」の知識か「スキル」のどちらかを横展開するとスムーズです。
岡田:私は、人材系の会社に9年勤めているんです。JobPicksでのライター業の場合、スキルが「ライティング」、ドメインは「HR」ですね。
慶野:岡田さんのように、最初からドメインもスキルもぴったり合致した複業を選んで、お金をいただくのは難しいものです。
ですから、どんなに小さなことでもいいので、自分の心に響く事柄を探して、すでに実績やスキルがあるものと掛け合わせて展開していくのがいいと思います。
具体的な例だと、以下のような知り合いがいます。
1:未経験からグラフィックレコーディングを複業へ:明日美さん
絵が大好きで、教育系出版社の編集者としてラフを描いていた経験を生かして、知人が主催するイベントで無償のグラフィックレコーディングを実践。次第に複業としてお金をもらえるほどに、スキルが磨かれていったそうです。
2:間借りで「昼スナック」:DelSole株式会社 上林 恵さん
BARを経営している知人から、昼間の休業時間帯のみお店を間借りして、週2回・3時間限定の昼スナックをスタート。2年間、毎週欠かさず継続した末に、自分が本当にやりたいこと、つくりたいコミュニティの形を見つけて起業。
最初から会社を辞めて自分のお店を持つのは、なかなかハードルが高いものです。コミュニティ運営に興味がある人は、上林さんのように月に1回、週に1回など営業日を決めて、「間借り」で始めてみるのもいいと思います。
3:片付けパパ・片付け部長:大村信夫さん
会社から兼業を認められた家電メーカーの社員で、ぼんやりとセカンドキャリアを考えていた頃に、たまたま知人に紹介された「片付け整理術」のセミナーにぴったりハマったという方です。
資格も取得し、モノの片付けから「心」や「思考」まで整理するメソッドを確立して、今では講演やワークショップで全国を回っています。
お3方に共通しているのは、小さく始めて、徐々に「ドメイン」か「スキル」をピボット(方向転換)していることです。
軸となる「ドメイン」も「スキル」も浮かばないという方は、プランド・ハップンスタンス(キャリアは偶発的に描かれるという理論)を意識して、まずはいろんな人と会って、いろんな世界を見てみるのがいいのではないでしょうか。
人生のテーマは、なかなか決まらないものです。30歳を超えても、60歳を超えても、将来の夢があっていいと思っています。
時間をやりくりする3つのコツ
岡田:私、基本的に怠け者なんです。平日の就業後はいつも疲れきって、複業の仕事をしなきゃしなきゃと思いながら、大体ゲームをするか寝てしまいます。
結局土日に詰め込んで、家事はほったらかし。「これじゃダメだ」という罪悪感ばかりが募って……。慶野さんはどうやって時間をやりくりしているんですか?24時間ずっと、仕事のことを考えているのでしょうか?
慶野:そんなにずっと働いているわけではないですよ。
確かにパラレルキャリア研究所の設立当初は、毎日複業のことを考えている時期もありました。
でも今は少し余裕もできたので、時間を目の前のことだけでなくもっと未来のことにも投資しようと、メリハリをつけて働くようにしています。
スケジュールとしては、こんな感じですね。
岡田:プライベートな時間も多いですね。インプット、コミュニケーションの時間もちゃんと確保しています。
バランスよく時間を使っているように見えますが、どんな工夫を?
慶野:意識しているのは、以下の3つです。
【1】スキマ時間を有効活用
複業の仕事を、執筆や企画などじっくり取り組む「熟成仕事」と、メールチェックやちょっとした調べ物などの「速攻仕事」に大別しています。
「速攻仕事」に関しては、15分の通勤時間などのスキマ時間で、一気に片付けてしまいます。
【2】予定外で時間が奪われない体制をつくる
電話は徹底的にNGにしています。着信があっても「要件はチャットでお願いできれば」と、文面でいただくコミュニケーションを取ります。
自分の都合の悪い時間も、先に伝えてしまいます。「平日は本業があるので、●時までは返信できないです」と、関係する方々に明示していますね。
イベントは絶対に開始時間をずらせないので、本業を3日前くらいから調整します。
【3】すぐに決断する
そもそもの意識にはなりますが、一番の時短は決断のスピードを上げることです。
会社員だと管理職になるまで自分で決断できることは少ないですが、複業はとにか
く、その場で決断していくことが大事。
例えば打ち合わせの場でイベントを日時・会場まで決めきってしまう、メールの返信に迷わずすぐ返す、などですね。
すぐに決断する習慣は、【1】スキマ時間の活用を意識することでも身に付くという
岡田:私は本業も複業も、計画性なくダラダラと時間を使ってしまっていました……。ちゃんとスケジュールを立てないとダメですね。
慶野:ただ、「スケジューリング・タイムマネジメントしなきゃ」と捉えると義務になっていき、時につらくなってしまいます。
なので、私は「タイムデザイン」で考えるようにしています。
「オン・オフ」「本業・副業(複業)」「Must・Will」「アウトプット・インプット」など、複数の要素を上手にクロスオーバーさせながら、自分の理想の時間配分に近づけるイメージです。
クロスオーバーの例としては、以下のようなものがあります。
複業で知り合った方を、本業の仕事で取材候補に挙げる
会社の同僚で複業を始めた方と、コラボイベントを開催する
家族に複業を手伝ってもらい、仕事と家族の時間を同時に持つ
行きたかったレストランでランチミーティングをする など
自分で時間をデザインして、シナジーを生んでいるという納得感があれば、予定が詰まっていても楽しいものです。
岡田:それなら私にもできそうですし、ワクワクします。
慶野:他の人が関係することは調整が必要なので、まずは1人でできることでクロスオーバーすると良い練習になるかもしれません。
例えば「インプット」はマイペースにできるのでおすすめです。 私はYouTubeで動画を見ながら(音だけ聴いていることが多いです)家事をしています。
誰もが平等に、1日24時間・週168時間しかありません。その中で、仕事や生活の構成要素を有機的に組み合わせていくと、より人生が豊かになるのではないでしょうか。
「副業疲れ」を防ぐ続け方
岡田:人生を豊かにしていくには、仕事の受け方にも工夫がありそうです。
慶野:時には断る勇気も大事ですね。
私の場合、目的のない会議への同席はお断りしています。要件定義が曖昧で、調整コストのかかりそうな依頼は「ここまでやるのであれば●円、その先もやるのであれば●円でお受けします」と、仕事のフェーズを区切って金額を明示します。
できる(Can)という理由だけで仕事を安請け合いして、WillやMustがない状態だと、うまくいかないことも
起業や独立ではなく、複業を選択する人は、「マイペースに働きたい」という志向の方が多いです。
ただし、「どれだけマイペースに複業をできるか」「どれだけ断れるか」は自分の市場価値次第で変わるでしょう。
マイペースに働く生活を手に入れるために、いったんはマイペースではなく、必死に
自分の市場価値を上げる時期も必要だと思っています。売れっ子は仕事を選べます
が、修業中の人が断ってばかりだと経験値は増えません。
私もコロナ禍の直前まで、月10回ほどイベントやキャリア講座を開催している時期がありました。複業の収入が本業の倍くらいあって、この頃の経験が今につながっています。
ただ、その時はアウトプット偏重で疲れ気味でした。
今はイベントがオンライン中心となり、開催ペースも月1〜2回になりました。仕事を厳選してマイペースに複業を楽しんでいます。
24時間というリソースを、目の前の仕事だけでなく、インプットなど未来の投資のために使う方向にシフトしつつあります。
岡田:頑張って自分のスキル・ドメインを拡大していく時期と、余裕をつくって未来に投資していく時期。行ったり来たりすることがポイントなんでしょうね。
慶野:無理にずっと、バリバリと仕事していなくてもいいんです。最適なペースは、個人によってもライフステージによっても異なります。
絶対にぶれさせてはいけないのは、「どうしたら幸せになるか」だと思っています。
それには、「幸せのリトマス紙」を持つことです。
幸せの「物差し」までガチガチに定義してしまうと、その基準から外れてしまった時に、つらくなってしまいます。
自分がどういう時に楽しいと感じるか、苦痛と感じるか。リトマス紙くらいの感覚で感度を高めて、その時の自分に合った働き方を選択していくことです。
複業も、幸せになるための手段の一つです。ぜひ上手く使いながら、自分が幸せなほうへ向かっていってほしいなと思います。
取材・文:岡田菜子、取材・編集:伊藤健吾、デザイン:堤 香菜、撮影:遠藤素子